岸和田市立野村中学校の自主研究発表会に参加させていただきました。

◯岸和田市立野村中学校訪問記(訪問の経緯)

 2023年11月10日、岸和田市立野村中学校のスクールワイドPBSの自主研究発表会に参加させていただきました。自主研究発表会にもかかわらず、100人を超える近隣の先生方や岸和田市教育委員会、松阪市教育委員会からも参加がありました。

 野村中学校が実践しているスクールワイドPBSは、石黒が過去に千歳中学校で実践した内容とほぼ同様のやり方を行なっています。それは、スクールワイドPBSを核にした総合的な教育システムです。このスクールワイドPBSを核とした総合的な教育システムのことを、石黒は「子どもの良さを認める指導」と名づけています。また、人が入れ変わってもシステムが継続する仕組みが取り入れられています。

 野村中学校の校長先生からの依頼を受け、2023年の2月に初めて、野村中学校の先生方に「子どもの良さを認める指導(スクールワイドPBS)」の研修をさせていただきました。年度が変わって異動があり、先生方も入れ替わるため4月にも同様の研修をさせていただきました。今回は、認める指導が野村中学校でどのように実施されているか、また、認める指導の効果がどの程度出ているのか、生徒さんたちに変化があったのかを見に行くために訪問させていただきました。

◯野村中学校のスクールワイドPBSの成果

 授業参観をさせていただく際に、校長室から教室まで移動しますが、その際、廊下の様子や生徒さんの傘が置いてある場所、下駄箱などを観察していました。下駄箱は整っていましたし、傘が壊されているようなことは見られず整然と置かれていました。

 授業を参観させていただいて、とても驚きました。それは生徒さんたちの表情がとても穏やかだからです。とても生徒指導上の大きな課題がある学校という雰囲気ではありません。ニコニコしながら授業に望んでおり、私たち来校者に大きな声で「こんにちは」と挨拶してくれます。また、先生方と生徒さんのやりとりを見ていても、とても良い雰囲気で授業が進んでいました。今年の2月にお話を伺った学校の状況とは大きく変わっていました。この授業を参観させていただいただけで、野村中学校のスクーワイドPBSは、大きな成果を出していることがわかりました。

◯自主研究発表会に参加して

 自主研究発表会では、最初に校長先生の挨拶があります。その挨拶の開口一番、校長先生から「私は野村中学校の先生方を心から尊敬しています。」との言葉がありました。おそらく先生方も校長先生に対して同様の気持ちを抱いているのではないかと推測しました。まさに、チーム学校となって行われたスクールワイドPBSだったのだと思います。これはスクールワイドPBSを成功させる大きな要因のひつとだと思います。以下に野村中学校の取り組みをご紹介させていただきます。(※この記事は、野村中学校が作成した、自主研究発表会のスライドの内容に、石黒が加筆し解説を加えさせていただいております。)

1 岸和田市立野村中学校に関わらせていただいた経緯

 岸和田市立野村中学校では、2019年よりスクールワイドPBSに取り組んでいらっしゃいました。しかし、昨年度、かつてないほどの生活指導上の大きな課題が生じたため、それを解決しようと、改めてスクールワイドPBSに取り組むため、TILA教育研究所にご連絡をいただきました。

2 野村中学校のこれまでの取り組み状況

2019年度→岡山県総社西中学校に視察⇒3学期からプレ実施
2020年度→PBS実践を本格実施
2022年度→石黒によるPBS実践の研修会
2023年度→生徒・教員で“指導の基準”を作成し、スクールワイドPBSに全校で取り組む

3 指導の基準:学校が大切にする価値観(生徒には行動の目標、教師には指導の目標となる)

“指導の基準”・・・KJ法(下記の写真)を用いて、まずは全教員で考え、次に生徒会執行部で考えました。生徒が学校生活を過ごす際、また教員が指導する際に『大事にすること』を同じ基準にして、『価値観の共有』をするためのものです。これにより学校として一貫性のある指導をすることが可能になります。

4 野村中学校の指導の基準(学校が大切にする価値観)

  1 自分を大切にする

  2 相手を大切にする

  3 集団を大切にする

 上記の3つが、野村中学校が作成した、指導の基準(学校が大切にする価値観)です。教師側から見ると、指導の基準ですが、生徒から見ると行動の目標になります。この方法の特徴は示された価値観が、具体的ではないところにあります。応用行動分析学では、行動は具体的に表現しなければいけないのですが、TILAの方法ではあえて抽象的にしてあります。これは、指導のプロセスで、生徒に具体と抽象の行き来ができるようにすることで、抽象的な概念からその場に相応しい具体的な行動を考えて生徒が判断して行動できるようにすることを狙っているからです。TILAのスクールワイドPBSと通常のスクールワイドPBSとの違いは、ここにあります。

5 野村中学校の取り組み内容

 野村中学校6つの取り組み
 ① Good Jobチケット(トークン)
 ② SEL
 ③ 行動チャート
 ④心のメッセージ
 ⑤ NOMUタイム
 ⑥ はーとふるウィーク

Good Jobチケット

 全職員がチケットの渡し手となり、生徒の望ましい・前向きな行動や発言を見かけたら発行します。チケットが個人で5枚もしくは、クラスで50枚溜まったら全校集会で表彰します。応用行動分析学で言うトークンです。

②SEL(社会性と情緒の学習)

Social Emotional Learning

 月に1回総合や学活の時間に取り組みます。 今まで家庭や地域で学んでいたことを、あえて授業として取り組み、社会性や心の育成を目指します。応用行動分析学では、「何かができない、やらない」理由として、スキルがない、その行動が強化されていないと考えます。そういう意味で、適切な行動の仕方を教えるSELはとても有効な取り組みと思います。

③行動のチャート

 生徒に期待する行動を視覚的に示したものです。学級会や専門委員会で生徒と教員が共に考えます。「子どもたちと教師が一緒に考える」このプロセスはとても重要です。「指導の基準づくり」も同様ですが、子どもや教師がこれらの作成に自我関与していないと、つくったものが効果的に働きません。クラスごとに抽象的なキーワード(指導の基準)をもとに、そのクラスが考える適切で具体的な行動を子どもたちが考えます。生徒がこの行動をしたら、教師は見逃さずにすぐに声をかけます。

④心のメッセージ

 毎月第1月曜日の朝読書の時間に行います。

月別目標に合わせて書いた教員からのメッセージを読み、感想を書きます。

各学年の道徳担当者が感想をフィードバックをします。

⑤NOMUタイム

 毎週金曜日の朝10分間で取り組んでいます。
ソーシャルスキルと自尊感情の向上をが狙いの活動です。
活動の『型』やルール・時間の『枠』を変えないようにしています。

そのため担任だけではなく、誰でも行うことが出来ます。

ルールを決めておき、その通りに行動できれば、そこは認めるポイントです。

すぐに子どもたちにできていることをフィードバックします。

はーとふるウィーク

 生徒と教師の関係性の構築や認め合い活動です。
生徒が話をしてみたい教職員を選択し、全校生徒と全教職員が放課後に1人ずつ面談をします。このハートフルウィークは、TILA教育研究所の石黒・鹿嶋が30年以上前から実施している教育相談週間です。いまでは多くの学校に広がっています。ハートフルウィークを実施すると学校の雰囲気が変わります。

◯生徒の感想

普段ゆっくり話すことが出来ない先生と話をしっかり出来たので、良かったと思いました。

先生と話す機会がなくても、はーとふるウィークで距離を縮めることが出来たのでまたやりたいと思いました。

たくさん話すことがあり、時間が過ぎてしまったので時間を伸ばして欲しいです。とても良い取り組みでした。

来場者からのメッセージ

●野村中学校の生徒の皆さん、みんなの力で創った良い学校に通っていて幸せですね。
今日、みなさんの眼差しがキラッ、キラッしていて、来させてもらった私まで心が温かくなりました❤️。さらなる向上を目指し、素晴らしい先生たちと共に、もっともっとみんなが安心して通える学校を創り出してください💪
野村中学校の皆さんの未来が楽しみです😊 ありがとうございました‼️

●どの学年の子たちも前向きな姿勢、笑顔で関わり合う姿がとても素敵でした。 ありがとうございました。

●授業を見れず残念でした。機会がありましたら、ぜひ参観させていただきたいと思います。

●すばらしい学校、先生、仲間に囲まれて本当に幸せだと思います。 是非とも、自分、相手、集団を大切にして下さい。

●とても元気で良かったです。挨拶してくれる生徒が多いのも印象的でした。
 誰かが話す時、みんなが体を向けて興味を示しているところも話し手からするととても話しやすい環境ができていたと思います。
 これまでの取り組みの成果だと感じました。素晴らしい環境でしっかりと成長して下さい。

●3-1 の社会の授業後、ゴミを捨てに教室の前に来た化粧顔の生徒が「こんにちは」と礼儀正しく挨拶をしてくれました。恥ずかしながら、挨拶をしていただけるとは思ってもいなかったので、自分が情けないです。誰にでもきちんと挨拶をする野村のみなさんに good job!

●先生と生徒が一緒に Step up!していく野村中学校、とてもかっこいいです!これからも、自分、相手、集団を大切に、心豊かなのむライフを楽しんでください♪

●みなさんの日々の頑張りを、友達も先生方も地域の方々も応援しています。頑張ってくださいね!

●本日の研究会に参加して野村中学校の先生はみなさんのことが好きで愛のある学校だと感じました。学校生活を楽しんで欲しいと思います。

●撮影されて緊張したと思いますが、しっかりと話し合っている様子を見せてくれてありがとうございました。

●講演からの参加で様子を見ていないのですが… 元気に笑顔で学校生活を送って欲しいと思います。

●今日は、お疲れ様でした。皆さん一人ひとりの『いのち』の躍動感を感じ、とても有意義な時間でした。ありがとう。鴻鵠の志をもって羽ばたいて下さい。

●野村中学校の皆さん、本当に素晴らしいです!自分を大切に、他者を大切に、集団を大切に!あなた方が大人になった未来がとても頼もしく思います。ありがとうございました。

●これからも、明るく、楽しく、野村中学校で過ごしてください。

●学校を自分たちでよりよい場所にしようと、日々前向きに取り組んでいることが伝わってきました。

 みんなで話し合いながら物事を進めていく経験は、今後必ず役に立ちます。

 素敵な学校を見せていただいてありがとうございました。

●このような取り組みをされている学校で学んでいる皆さんが羨うらやましいです!これからも頑張って下さい。

◯以下は参加者の方のアンケートのまとめです。

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